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「TPP」への反応を見て [農村だより]

 11月5日金曜日午前

 最近急に報道が多くなった「TPP」ですが、

 環太平洋の自由貿易化を進める

 環太平洋パートナーシップ協定

 に関して、各方面からの反応を見ていて感じたことを少し書いてみます。

 当然ながら「反対」を強く表明しているのは、JA全中ですね。

 農業者団体が拒絶反応を示しています。

 それに引きずられて、政治家も腰が引けてしまっています。

 農林水産省は、国家のため、日本の農業のため、と言いつつ省益を死守します。

 相変わらずの光景ですが、ひとつ言いたいのは、

 JA全中の中身を見れば分かるとおり、反対しているのは高齢農家と組織の上層部です。

 後継者のいない農家の団体が、政府に圧力をかけて何になるのか。

 実際の農業の現場では、自分が耕作を辞めてしまったら、あとは荒地に戻るだけの田んぼです。

 今までやってきた農協の役員、全農の役員、農林水産省の官僚、農林族と言われる

 政治家の皆さんに言いたいですね。

 「何をやってきたんですか、あなたたちは」と。

 自分の家の農地についても、あとの責任を持てない人間が、

 どうして国家の今後の行き方に「反対」だと言えるのか、その神経がわからない。

 あまりに無責任で、あきれて見ています。
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「米トレーサビリティ法」の施行 [農村だより]

 10月23日土曜日午前

 事務所の窓からは快晴の青空が見えます。今日と明日は秋晴れで、月曜日からは雨模様で

 グッと冷え込むようです。貴重な晴れです。吟醸麹つくりが始まって、寝不足の日々が2月まで

 続きますので、今日は日に当たろうかなあと思います。

 2008年9月、世の中は「偽装米」の事件でしばらく賑わいました。三笠フーズという会社の不正

 事件が発端で、日本酒の酒蔵は倒産するし、焼酎は返品の山になるし、和菓子は注文がなくな

 るし、ということで大変でした。「事故米」を伝票操作でまともな米に見せかけて販売し、暴利を

 貪るの構図でした。

 それに対して、国は「米トレーサビリティ法」なる法律をつくって、この10月1日より施行しました。

 要は、偽装事件の再発防止ですね。最終の加工業者に対してまで、生産から流通過程すべて

 に記録を保存させて、常に照合検査ができる体系をつくらせるということです。

 日本酒業界にとっても歓迎すべき法律の施行です。

 「地酒」といいながら、実は「米」はどこから持ってきても関係ないのが「地酒」ですが、その事実

 を消費者が知ることはできませんでした。

 来年の7月1日からは、製品への表示義務も発生しますので、「地酒」の意味合いも微妙になって

 くることでしょう。やはり、日本酒の原料米に対する認識を、「単なる原料」から「価値の源泉」であ

 るというふうに改める時期に来たのだと思います。

 今までが変な状態だったので、ある意味において「正常」な認識に戻るのだということです。

 製造技術の研究が進み、それが業界を発展させた歴史を否定するものではありませんが、優秀

 な頭脳が集積した挙句に慢心に陥り、原料である「米」に対する敬意が薄れて、日本酒業界自体

 が衰退するという、典型的なパターンになりました。

 「米」を軽んじたつもりはない、と日本酒業界人は言うでしょうが、事実として彼らの言動は「米」を

 軽視しています。そのことが日本酒にとって「致命的」な価値の毀損を引き起こしている事実を知

 りません。情けないことです。

 自戒を込めて言いますが、日本酒業界人はどれだけ「米」を知っているのか、どれだけ「田んぼ」

 を知っているのか、どれだけ田んぼのある「土地」を知っているのか、どれだけその「土地」にかか

 わってきた先祖の歴史を知っているのか。

 流通・消費市場における「商品価値」という評価の問題は別次元のこととして、まずは自分たちの

 拠って立つ一番最初にして最も根本的な部分に眼を向けなければならないのです。

 「米」なくしては「酒」はできない。

 当たり前のことですが、その当たり前のことを忘れてしまった日本酒業界人に対して、

 「米トレーサビリティ法」の施行が、それを思い出させてくれる契機になればと期待しています。
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「米」をめぐる議論 [農村だより]

 10月21日木曜日午前

 平成22年産米をめぐる新聞報道で、猛暑による品質の低下が明らかになっています。

 米農家にとっては、21年産米の過剰在庫を原因とする米価の下落に、品質の低下が

 重なり、更には収量の低下もあって、正に三重苦の状態に陥りました。

 背景にある就農者の高齢化と後継者不在の状況は、耕作の現場で急速に顕在化して

 離農者が続出し、耕作不能の田畑が広がっています。

 私は機会あるごとに農業の実態を伝えてきましたが、マスコミにおいても、行政におい

 ても、いかなる関係者のレベルにおいて、何ら実効性のある行動が起こされたという事

 実を知りません。

 もっとも、結論から言ってしまえば、いかなる策を施しても、日本の稲作農業は崩壊して

 しまいます。これを避けることは不可能です。壊滅的な状況が眼に浮かびますが、そうし

 た状況においても、点々と生き残る地域や組織、そして農業者個人が必ずいます。それ

 も確かな事柄です。

 私たちは、ほんの狭い中山間地に生きる農業者の集団ですが、こうした状況の中でも何

 とかして生き残り、生き延びようとしています。

 事ここに至っては、手の打ちようがなく、どんな処方箋を書けばいいのかと聞かれても、答

 えようがありません。

 いったん焼け野原のようになってからなら、やり直す具体策はありますが・・・・・。

 
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「限界集落」考 [農村だより]

 10月14日木曜日午前

 仕込みが始まる前に、部屋の整理整頓をしながら、読みかけの本にざーっと眼を
 
 通しました。その中の一冊です。

    限界集落 吾の村なれば

    曽根英二著 日本経済新聞社刊 2010年4月22日 第一刷

 確か6月に長男の保護者会に三重県に行った際、京都駅の三省堂で買った本です。

 内容はとてもリアルで、我々の生活感・皮膚感をていねいに文章化しています。

 問題を挙げればキリがないので、どうやって中山間地の集落が生き延びていくか、

 その一点で拾った部分が次の文章です。

 (P.226)

 「一番問題なのは産業が成立しとらんこと。千屋はもともと『黒いものなら千屋』と言われて、

 千屋の炭だとか、千屋牛だとかあったけど、いまに至っては、国の農業政策、林業政策の

 誤りとかで産業が成り立たない。米価が安い、木材を切り出しても安うてお金にならん。か

 えってコストがかかるばかりで収入としては少ない。市街地とかへ弁当持って仕事に行った

 ほうがいいだろうと。千屋で産業が成り立っとらんから、雇用や職場がない。これが少子高

 齢化につながっている。解決策というのは逆にしていけばいいということになる」

 (抜粋終わり)

 地方、地域、中山間地に必要なのは、土木公共事業ではありません。生産活動としての

 産業です。「生産」なくして、安定した地域社会は成り立たない。山を切り崩し、道路をつくる

 公共事業は、本質的な過疎対策や雇用対策ではない。わかりますか、政治家の方たちに。

 ・・・・・・・・

 やっぱり批判がましくなりますね。でも、バカすぎますね、ほんとうに。
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伊藤義造様 [農村だより]

 10月13日水曜日夕方

 伊藤さん、お元気でお変わりなくお過ごしのことと存じます。

 先だってはエアメールを戴き、うれしく拝読いたしました。

 根知谷では、もうほとんどの田んぼで稲刈りが終わり、

 何だか魂が抜けたような、脱力感が漂っています。

 駒ケ岳の紅葉も始まって、日に日に秋が深まっています。

 今年の夏は猛暑が続いて、山の木の実が不作のようで、

 連日、マスコミではクマの被害や目撃情報が流れています。

 根知川の水も少しずつ澄んできて、例年だとサケが遡上してくる時期です。

 1年というのはあっという間に過ぎて行きます。

 4月に種をまき、苗を育てた稲が、

 5月に田植え、

 6月は除草、

 7月は畦草刈り、

 8月は水管理して、

 9月は稲刈りです。

 その稲刈りが終わらないうちに、精米が始まり、

 10月13日、今日から酒造りが始まりました。

 これから延々と3月末まで休みなしで酒蔵の中は動き続けます。

 昨年の冬は、例年にない豪雪でした。

 屋根雪を下ろしながらの酒造りは、結構大変でしたが、今年の冬はどうなるでしょうか。

 春夏秋冬、四季折々に趣きのある根知谷の自然は、見ていて飽きません。

 ここに住み続けるのは結構タフですが、やはり素晴らしい環境です。

 米作りにも酒造りにも。

 励ましのお言葉を頂いて、いっそうがんばろうと思います。

 これからも拙いホームページですが、どうぞご覧下さい。

 IWCでの受賞は、私自身誇りに思います。

 根知谷に戴いた賞ですし、スタッフ全員に戴いた賞です。

 今晩はスタッフ全員でトロフィーを飾ってお祝いをします。

 ブラジルまでこの喜びが届いてしあわせです。ありがとうございました。

 
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最後の保護者会を終えて [農村だより]

 9月27日月曜日午前

 先週9月24日は、午前に等級検査がありましたので、それを見届けてから、三重県伊賀市の

 愛農学園農業高等学校に向かいました。

 2010年の根知谷産米については、越淡麗の収穫作業ならびに等級検査が終わったところで

 総括します。

 2008年4月に入学してから、ここまで8回の保護者会がありました。全寮制の高校ですから、

 保護者会に出席して、自分の目で学校の様子を見る、先生のお話を聞く、息子と会う、これが

 大切だと考えて足を運びました。

 3年生になると、2学期の保護者会が最後となりますので、正に今回が最後でした。全体会合

 には間に合いませんでしたが、担任の先生との個別面談には間に合って、進路についての最

 終的な確認をしました。日頃の学校生活の様子など、子どものこともお聞きして、安定した生活

 をしているようで安心しました。

 高校生活も、もうまとめの時期に入りました。

 それにしてもいろいろなことがありました。親子ともども実に実りの多い愛農学園であったと思い

 ます。保護者会は1泊2日で行なわれますが、今回は、2日目に「小谷純一記念会」と「新校舎

 完成式」がジョイントされていて、また新たな愛農学園の一面を見ることができました。

 子どもに「生きる力」をつけてほしいと願って、愛農学園へ送り出しましたが、今はほんとうによ

 かったと思っています。たくましく成長し、大学へ目的を持って自ら行こうとする姿勢によくそれが

 顕れています。

 まだまだ卒業までにやらなければならないことはたくさんありますが、親としてのつとめはこれ

 でひとつ終わりました。
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農家の悲鳴が届かない [農村だより]

9月24日金曜日午前

 全国紙に少し掲載されましたが、今、米農家は本当の意味で窮地に立たされています。新米の出荷が8月末から始まっていますが、その出荷価格が低すぎて、とても採算ベースに乗りません。戸別所得補償があるから少しは救いもあろうかと思われる方も、現実を知らない楽観主義者に過ぎません。

 需給関係から見れば、昨年産の古米が在庫としてあるために、新米価格が低迷する仕組みですから、それは経済の原則からすると、ある意味で当然の動きです。

 しかし、問題の本質は、経済の原則どおりに市場が動くと、生産サイドが潰れてしまう、という構造にあります。米農家には需給による価格変動に耐えるだけの資本力・財務力が全くありません。生産者の大多数が零細農家であり、家族労働で支えられていますので、資本の集約が不可能な構造なのです。

 辛うじてここまで米の生産ができてきたのは、政府が様々なカタチで補助金を出したり、価格維持の支援をしてきたからです。それもいよいよ限界に近づいているようです。米農家の高齢化と後継者不在の状況は、このような厳しい取引き環境では、一層「離農」や「耕作放棄」を進める結果となるでしょう。赤字経営の会社が10年20年と続くわけがないのです。当たり前のことですね。米農家は実質的に延々と赤字経営を続けてきたのですから。

 もう限界です。恐らく日本の米作り農業が崩壊する時期は早まるでしょう。経済に強いという学者や政治家、評論家などの皆さんにお聞きしたいものです。輸入すれば事足りると言うのでしょうが、そんな簡単な問題ではないし、調整に要する時間もわかっていなのではないか。

 農業の現場を知らない、頭だけいい人種は、実は無力であって、国民に塗炭の苦しみを強いることになるのです。第二次世界大戦の敗戦を見ればイヤというほどわかります。米作り農業が破綻するということは、農業関連経済が破綻するということで、それは農村部の地域社会の破綻を意味します。

 地域社会・経済が壊死していく状況というのは、人体に例えると、手足が壊死することですから、都市部を頭部・胴体に例えるならば、正常な身体とは言えなくなるのです。自らの手足が腐っていく状態を、見てみぬフリをする感覚が私には理解できません。

 日本の国民みんなが想像力が乏しくなったのか、確実に見える近未来の姿が見えないようです。何れにしても離農、耕作放棄は今まで以上に急速に進みます。

 
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IWC2010を振り返って [農村だより]

 9月23日木曜日午後

 早いもので9月7日からあっという間に2週間以上が過ぎました。

 International Wine Challenge 2010

 ロンドンで行なわれた受賞式、ならびにアワード・ディナー

 9月7日火曜日、午後6時から午前0時まで、ヒルトン・パークレーンが会場でした。

 すごかったですね。日本では味わうことのできない、ものすごい雰囲気です。

 世界中から9000点にも及ぶワインが出品され、ゴールド・メダルは3%です。

 日本酒部門も405点の出品に対して、14点がゴールド・メダルでした。

 日本酒部門は、5つのカテゴリーに分かれ、今回我々が受賞したのは純米吟醸酒・純米

 大吟醸酒のカテゴリーです。

 ゴールド・メダル受賞酒の中から、さらに優秀なものにトロフィーが与えられますが、今回は

 日本酒部門のゴールド・メダル14銘柄に対して、すべてにトロフィーが授与されました。

 IWCの運営のうまさは、その価値を高め、受賞式当日まで関係者の関心を惹きつける仕組

 みにあります。9月7日当日のアワード・ディナーの中で、各カテゴリーの最優秀賞を発表す

 るという趣向です。

 午後10時20分頃、会場中央のステージでコールされた「チャンピオン・サケ」に、我々の名前

 がありました。日本酒部門の審査を統括する最高責任者のサム・ハロップMWの祝福を受け、

 ステージ中央でIWC会長のアンドリュー・リード氏からずしりと重いトロフィーを受け取りました。

 正にロンドン出張のハイライトであり、今までの酒造人生のハイライトでありました。
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冨山和彦ふたたび [農村だより]

 8月31日火曜日午前

 「カイシャ 維新」 冨山和彦著 朝日新聞出版 2010年8月30日 第1刷発行

 今年の4月に朝日新聞に掲載された記事についてブログに書きましたが、この著者の最新刊

 を読み終えたところです。

 結構私には難しい内容で、マジメに読んでいると脳みそに汗をかきそうになります。

 しかし、考えていることは、こんなに優秀な頭脳も、私のような山の中で米作り酒造りをしている

 人間もたいして変わりがないことに、ちょっと妙な感じがしています。

 重要なのは、直面している問題に対する解は、どこを探しても無いということでしょう。

 国家にとっては、日本固有の、企業にとっては、その企業固有の解を見出さなければならない。

 二流三流学者のように、欧米に模範やモデルを求めるのは、最低なんですね。

 我々は小さな酒蔵ですが、日本酒業界のことはよく見えています。

 中山間地の農村にいて、米作りをしていますので、稲作農業の将来もわかります。

 大きな経済社会の変化の中で、どう生き抜いていくか、その最適解を常に求めています。

 常にギリギリの時間との競争の中で、爪先立ちのような緊張感で考えています。

 著者の169ページから170ページにかけての現状認識は、私も持っています。

 (抜書き)
  残念ながら、緩やかな衰退の中で豊かなスローライフを楽しめるような状態に私たちの国

 はない。おそらくある一点を境に、今の相対的な貧困問題は、絶対的な貧困問題(本当に

 食えなくて飢える)に転化する可能性が高い。それが島国ニッポンの現実だ。私の祖父母

 もそうであったが、昭和40年代までは、貧困がゆえに、食えないがゆえに、日本人は海外

 に移民として出て行ったのである。落ちるときの方が、一度、坂道を転がり始めると速いの

 は、会社経営も国家経営も同じである。このことを肝に銘じて、国家経営に当たる人も、企

 業経営に当たる人も、そして市井に生きる私たち一人ひとりも、急激な大変化の中にある

 世界の資本主義経済の厳しい現実を生き抜いていかなくてはならない。

 (抜書き終わり)
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8月の根知谷 [農村だより]

 8月30日月曜日夕方

 8月は全国的に記録的な猛暑となりましたが、根知谷も暑い日が続きました。

 雨らしい雨が降ったのは1日だけで、それもほんの数時間でした。

 第一仕込蔵の屋根葺き替え工事や、精米所の屋根の塗装工事をやってきましたので、

 晴天は好都合でしたが、人間の方が大変です。

 工事に入っている職人さんや、田んぼの草刈りに出るスタッフが熱中症にならないか心配

 していました。幸いにして倒れる人はいませんでしたが、みんな疲れたようです。

 稲の生育は順調に進んで、五百万石、越淡麗とも立派な稲穂を垂れています。

 収穫時期は、平年より少し早めになる予定です。

 根知谷の五百万石は、9月10日を目標にして、前後5日が刈り取り適期と想定して栽培

 管理をしますので、9月5日が刈り始め、9月15日が刈り上げ、というのが標準です。

 今年は9月3日から刈り始める予定ですから、2日ほど早い登熟のようです。

 4月から5月にかけての異常な低温にさらされたことを考えると、生育の遅れを取り戻して

 余りある今の状況は想像が付きませんでした。

 毎年毎年違う気候パターンを経験して、稲の生育管理をしていると、ほんとうに経験が必要

 な仕事であると痛感します。

 これを酒造りの面からみると、その年の気候の影響で五百万石や越淡麗がどんな品質・

 性質になったのか、ということに興味が集中します。

 2009年産米は、低温・長雨のあとに、8月の夏らしい高温で何とか生育のバランスを取り

 戻しましたが、9月にはまた雨が続いて、気候に恵まれない年でした。栽培管理のノウハウ

 が熟成しつつあり、酒造りの段階では2008年産米(当たり年)の酒に勝るとも劣らない出来

 栄えになりましたが、さて、今年のような猛暑の年の2010年産米は、どんな酒になるので

 しょうか。
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