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「米トレーサビリティ法」の施行 [農村だより]

 10月23日土曜日午前

 事務所の窓からは快晴の青空が見えます。今日と明日は秋晴れで、月曜日からは雨模様で

 グッと冷え込むようです。貴重な晴れです。吟醸麹つくりが始まって、寝不足の日々が2月まで

 続きますので、今日は日に当たろうかなあと思います。

 2008年9月、世の中は「偽装米」の事件でしばらく賑わいました。三笠フーズという会社の不正

 事件が発端で、日本酒の酒蔵は倒産するし、焼酎は返品の山になるし、和菓子は注文がなくな

 るし、ということで大変でした。「事故米」を伝票操作でまともな米に見せかけて販売し、暴利を

 貪るの構図でした。

 それに対して、国は「米トレーサビリティ法」なる法律をつくって、この10月1日より施行しました。

 要は、偽装事件の再発防止ですね。最終の加工業者に対してまで、生産から流通過程すべて

 に記録を保存させて、常に照合検査ができる体系をつくらせるということです。

 日本酒業界にとっても歓迎すべき法律の施行です。

 「地酒」といいながら、実は「米」はどこから持ってきても関係ないのが「地酒」ですが、その事実

 を消費者が知ることはできませんでした。

 来年の7月1日からは、製品への表示義務も発生しますので、「地酒」の意味合いも微妙になって

 くることでしょう。やはり、日本酒の原料米に対する認識を、「単なる原料」から「価値の源泉」であ

 るというふうに改める時期に来たのだと思います。

 今までが変な状態だったので、ある意味において「正常」な認識に戻るのだということです。

 製造技術の研究が進み、それが業界を発展させた歴史を否定するものではありませんが、優秀

 な頭脳が集積した挙句に慢心に陥り、原料である「米」に対する敬意が薄れて、日本酒業界自体

 が衰退するという、典型的なパターンになりました。

 「米」を軽んじたつもりはない、と日本酒業界人は言うでしょうが、事実として彼らの言動は「米」を

 軽視しています。そのことが日本酒にとって「致命的」な価値の毀損を引き起こしている事実を知

 りません。情けないことです。

 自戒を込めて言いますが、日本酒業界人はどれだけ「米」を知っているのか、どれだけ「田んぼ」

 を知っているのか、どれだけ田んぼのある「土地」を知っているのか、どれだけその「土地」にかか

 わってきた先祖の歴史を知っているのか。

 流通・消費市場における「商品価値」という評価の問題は別次元のこととして、まずは自分たちの

 拠って立つ一番最初にして最も根本的な部分に眼を向けなければならないのです。

 「米」なくしては「酒」はできない。

 当たり前のことですが、その当たり前のことを忘れてしまった日本酒業界人に対して、

 「米トレーサビリティ法」の施行が、それを思い出させてくれる契機になればと期待しています。
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