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「古酒」との違いは [根知だより2015]

1月31日(土)午前

 この冬は、いきなり12月初めに大雪となり、大量の積雪で年末を迎えましたが、1月に入ってからは、降雪量も少なくて、寒中はかえって雨が降ったり晴れ上がったりで、まるで春先のようでした。ここ数日は氷点下の冷え込みで、季節感としては一か月早いような感じがしています。酒造環境としては、酒蔵一帯が大量の積雪に囲まれていますので、安定した低温状態で、仕込みは順調に進んでいます。

 さて、最近の話題ですが、Nechi 2010, 2011, 2012, 2013 をテイスティングしてもらい、出版社のライターやカメラマンの方々と話をしていると、「これは古酒ですか」と質問されることがしばしばあります。

 日本酒の世界に「生産年(ヴィンテージ)」という概念がないので、仕方のないことですが、ワインでは当たり前なので、説明は極めて簡単です。Nechi 2010 というのは、根知谷の2010年産米(五百万石、越淡麗)がその年(正確には2010年10月から2011年3月)に醸造されたものですよ、という意味です。

 古酒とは、単純に3年以上貯蔵熟成した日本酒を意味します。原料米の生産年は無関係です。古酒に関して重要なのは、貯蔵した年数だけで、醸造した年がどんな気候だったとか、その年の原料米の出来は良かったのか、悪かったのか、ということが全くわかりません。

 ちょっとわかりにくいかもしれませんが、確かにNechi 2010 は古酒とも言えますが、2010年産ということに意味があり、その猛暑の年に収穫された米は、平年からみると硬めで、出来上がったお酒もスリムなプロポーションでした。2015年になった今では、見事に熟成してコンディションは上々です。

 原料米の生産年を語ることができるのが Nechi 2010 のようなヴィンテージ表記のある日本酒であり、ただ単に貯蔵熟成にかけた年数のみを語るのが「古酒」なんです。この違い、日本酒だけの世界でご理解頂くのは難しいでしょうか。
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米トレーサビリティー法 [根知だより2015]

1月10日(土)午後

 事務所の外には1mの積雪。穏やかな日差しで雪の白さが際立ちます。今年の冬は暮れも正月もなく、よく雪が降りました。時折雨も降って、屋根雪下ろしが大変でした。若い頃は何でもなかった作業がだんだん大変になってきましたが、酒造りには抜群の環境だし、雪解けの水は農業用水になりますから、自然の恵みに感謝します。

 さて、昨年来いろいろな形で日本酒が取り上げられています。新聞、テレビ、雑誌、単行本、様々な視点から日本酒を盛り上げて頂き、ほんとうにうれしいかぎりですが、中でも原料米に注目し、米作りについてや、その産地を取り上げる記事も出始めました。もう少し時間がかかるかもしれませんが、いよいよ日本酒の世界にも「産地」を語り、米作りから酒造りまで同一地域で完結する「ドメーヌ・スタイル」の酒蔵がマーケットからその価値を認められるステージが見えてきそうです。

 日本酒のラベルをよく見て下さい。原材料表示の中に「米(国産)」、「米こうじ(国産米)」と書いてあるケースが多いと思いますが、これは「米トレーサビリティー法」に基づく表示義務です。少なくとも外国産米は使っていませんよ、という表示ですね。因みに、弊社では根知谷産米100%ですので、「米(新潟県産)」、「米こうじ(新潟県産米)」となっています。

 新潟県で日本酒を造っているのに「長野県産米」とか「兵庫県産米」という表示は地酒らしくないですね、少なくとも消費者の目線ではそうでしょう。また、ややこしいことに、例えば新潟県産米と長野県産米を併用した製品では、その使用比率を書かない場合は、「国産米」という表示になります。

 あくまでも大切なことは、原料米を「どこで」、「誰が」、「どんな栽培方法で」作り、「どんな品質評価を受けたのか」 ということを消費者に示すことができるかどうか、ということです。

 いま、マクドナルドの異物混入が報道されていますが、食材そのもののトレースがそれ以上に重要なはずです。価格の高い、安い、ではなくて、製品原材料の由来そのものの情報が開示される状況をメーカーは準備しなくてはなりません。
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農家組合長の改選 [根知だより2014]

12月30日(火)午前

 年内の営業は本日で終了です。明日から1月4日までお休みを頂きます。2014年1年間皆様方には大変お世話になりました。厚く御礼を申し上げます。

 酒造りの現場は、正月休みの間、酒母ともろみの管理にスタッフが交代であたります。元旦は私が担当しますので、ひとりで酒蔵におります。天候が荒れ模様ですので、除雪作業もありそうです。

 さて、年度末の3月に向けて、区長はじめ自治組織の役員改選の動きが始まっています。私が関わっている根小屋農家組合でも、任期2年の役員改選時期にあたり、話し合いをしていますが、構成員の高齢化と後継者不在の状況にあって、後継の人選は容易ではありません。

 ここまでの2年間で大きな組織改革を実行しましたが、もう2年かけて農家組合そのものを解体することが必要です。なぜなら、農家自体がほとんど無くなるからです。私は農業生産法人を設立し、若いスタッフとともに酒造好適米の生産を続けていきますが、地元住民としての農家は、私ひとりになるかもしれません。まわりに若い世代がいないのです。

 米作りを続けるには、農業用水の安定的な確保が絶対条件ですが、そのための用水維持管理を自治組織でやってきました。雨の日や風の日でも、担当役員は取り入れ口や用水路の掃除や点検を欠かさず、日曜日も祝日もなくやってきました。

 次期農家組合長は重い職責を担いますが、執行部役員・代議員が一体となって、農地・用水路の維持管理の仕方について、持続可能な体制をつくり上げることが使命となります。

 過疎化・高齢化が急速に進む中山間地は、おそらくどの地域でも同じだと思います。あと2年で新しい運営手法をつくり上げる、何としてもやり遂げなければなりません。
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2014年12月は豪雪 [根知だより2014]

12月27日(土)夕方

 今年の12月は第一週から雪が降り積もり、第二週には完全な根雪、しかも屋根雪下ろしに追われる状態になりました。近年にない12月の豪雪です。11月の最終週が記録的な暖かさで、酒造りの冷却が追いつかないほどだった状況から一気に真冬の、しかも1月下旬から2月上旬にかけての頃と同じ、最も厳しい冬になりました。

 酒蔵の外がすっぽり雪に覆われると、酒造りの環境は格段に良くなります。空気中の塵や雑菌を雪がからめ捕り、清浄になると同時に、低温で安定します。しかも冷却に電気代は全くかからず、環境にやさしい酒造りができます。

 近年指摘されるようになった「環境になるべく負荷をかけない酒造り」という課題。いくら美味しい日本酒がつくれても、大量の電気を使ったり、原料米を遠隔地から長距離輸送して燃料を多く使えば、環境に良くないことは確かです。外国から視察に訪れるワインの関係者は、我々日本酒メーカーの姿勢を厳しい目で評価していきます。

 根知谷で米作りから酒造りまで完結した生産体制をとっていても、さらに自然エネルギーの利用を高める努力をしなければなりません。真に評価される日本酒をつくるのは、酒蔵の中だけでは難しいということをどれだけの日本酒業界人がわかっているのか、とても疑問です。
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11月22日の地震 [根知だより2014]

11月24日(月)午前

 一昨日午後10時08分、長野県北部の白馬村を震源とする地震がありました。白馬村、小谷村、小川村、長野市などの被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。

 糸魚川市は震度5弱でしたが、お蔭様で弊社も根知谷地域でも被害はありませんでした。多くの方々からお見舞いのメールやお電話を頂戴致しました。心より厚く御礼を申し上げます。

 糸魚川市内においては、一部家屋の損壊や墓石の倒壊、道路に亀裂が入るなどの被害はありますが、一部地域に限られていて、おおむね平穏です。ただし、余震はまだまだ続いています。これから雪の季節になりますが、屋根にたくさんの雪が積もっている冬でなかったことが、不幸中の幸いです。

 改めて地震の怖さを感じましたが、ちょうど弊社酒蔵の建物が大断層の真上にあって、ユーラシア・プレートのヘリに位置しているために、比較的地震の揺れには強い立地であることが幸いしています。10年前の中越地震、6年前の中越沖地震、何れの地震でも揺れましたが、被害は皆無でした。大断層の真上にあることが、逆に震源地にならず、他の地域の地震についても影響を受けにくいのかもしれません。

 地震に対する日頃の備えが重要であることを、もう一度スタッフともども確認しあう朝のミーティングでした。
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酒米が足りない [根知だより2014]

11月5日(水)午前

 一昨日夜のニュース番組を見ていたら、日本酒業界では原料となる酒米が足らない、という報道がありました。海外への輸出が好調で増産している酒蔵においては、商機を逃したくないだろうし、普通に安定生産している所では減産しなくてはならないかもしれません。

 コシヒカリなど食用米は、過剰在庫の影響で価格が下落して、農家は死活問題になっていますが、何ともおかしな状況です。こんなねじれたことになった原因は何なのか、これからどうしていったらいいのか、農業・酒造業・農林水産省・財務省・経済産業省の関係者が連携して、いい方向へ向かっていってほしいものです。

 省庁の連携が如何に難しいかは、日頃から縦割り行政の弊害に悩まされている民間事業者なら誰しもわかっていますが、先月弊社が認定された「地域産業資源活用事業計画」においてもハッキリ現れています。

 先月10月17日に新潟市内で行われた認定式では、関東経済産業局、関東信越国税局、北陸農政局から担当部署の次長、課長が出席されて、それぞれの局長印が押された認定書を私に手渡しされました。厳粛な雰囲気があり、認定されることの重さを感じましたが、そもそも何で経済産業省、財務省、農林水産省からそれぞれ認定書が出てくるのか、私には甚だ非効率だと思われましたし、こんなことだから産業政策も非効率なんだとわかりました。

 来年以降、米作りの現場がどう変わっていくのか、一時も目を離せない激動期に入っていますが、日本国内にそんな緊張感は微塵も感じられません。私たちは根知谷で完全自給体制をつくっていますが、やはり農業全般の問題が気になります。
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よろこびの秋・・・ [根知だより2014]

10月11日(土)午前

 昨日、本年2回目の等級検査が弊社精米所にて行われました。受検したのは「越淡麗」と「コシヒカリ」。何と越淡麗では自社栽培で初めて特等米の格付けが出ました。特等米46%、一等米54%です。コシヒカリは全量1等米。こちらは特等米の格付けがない品種ですが、検査官からは高い品質との評価を頂きました。

 これで2014年産米の等級検査をすべて終え、20日から酒造りがスタートします。精米はすでに9月29日から始まっていますが、スタッフは仕込みの準備に連日追われています。

 山田錦など西日本原産の品種はこれから収穫の最盛期を迎えますが、台風19号の影響が心配です。同じコメ農家としては、現場の苦労を実感していますので、少しでも負担が少なくなることを祈っています。

 さて、本来であれば収穫の秋は、よろこびの秋であるはずですが、今年はちょっと感覚が違います。以前にも書きましたが、米価の大幅下落によって、農家経営は窮地に追い込まれています。すでに来年の作付けをあきらめた大規模農業法人も出てきたそうです。

 買い手である流通業者、そして最終消費者にとっては、安いに越したことはありません。しかし、現在の状況は常軌を逸していると思います。そのことに対する感覚は、すでに日本のほとんどの国民がマヒしています。

 政府がこの4月から実施した農政改革と称する農業・農村・中山間地を崩壊・消滅させる政策は、もう取り返しのつかない状況を造り出しています。はっきりと目に見える事態が起こった時は、すでに遅いのですが、その責任を誰が取り、その代償を誰が払うのか。間違いなくそれは私たち自身です。

 今年限りでやめる農家の田んぼを預かり、いらなくなった農機具を引き取り、そしてまたさらに静かになっていく優良農地を、来年以降どうやって守っていくか、真剣にその手立てを考えています。

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2014年産米 刈り上げ! [根知だより2014]

10月4日(土)午前

 一昨日の10月2日に越淡麗の稲刈りが終わり、2014年産米の稲刈りがすべて終わりました。これを「刈り上げ」と言います。スタッフ全員にその「お祝い」と慰労に代えて、お酒を1本ずつ持ち帰ってもらいました。毎年毎年のことですが、無事に「刈り上げ」ができたことにホッとしますし、スタッフのみんなには感謝します。

 農家にとって稲刈りは重労働です。機械化された今日では、機械操作に危険も伴いますので、安全第一で無事に作業を終えることが最も重要です。そして、天気が変わりやすい秋の農作業は、まったく人間の都合通りにはいきません。米の品質と収量の見極めもあり、心も身体も休まる暇は一時もありません。そんな緊張の連続の中で、約一ヵ月間を過ごします。

 今日は最後の籾摺り(調製)です。これで越淡麗の収穫量が確定します。等級検査は10日に行い、そこで格付けが決まります。蔵内ではすでに酒造りに向けて清掃作業が始まっています。精米所では精米機が順調に稼働して、次々に白米に仕上げています。

 今年の秋は自社栽培12年目にして初めて10月まで収穫作業がずれ込みました。8月後半の日照不足、9月前半の雨の影響が収穫作業の遅れの原因でした。これも私たちにとっては初めての経験で、米質・酒質がどうなるのか、興味深い酒造りがまた始まります。
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2014年産五百万石特等米 [根知だより2014]

9月24日(水)午前

 昨日午前9時半から弊社精米所(国の特別検査場)にて、第一回目の等級検査がありました。公益財団法人日本穀物検定協会から検査官を派遣して頂き、2014年産五百万石について、自社栽培、契約栽培すべての等級検査が終わりました。

 契約農家3軒の検査から始まり、自社栽培へと作業は進んでいきました。契約農家の五百万石はすべて1等米。中には特等米に近いものがあり、全般的には楽々1等米の格付けでした。自社栽培については受検した数量の98%が特等米になりました。すごいことです。

 五百万石については収穫作業、等級検査がすべて終了し、数量と品質の格付けが確定しました。2014年産五百万石の実に61%が特等米です。温度、日照時間、降水量の基本データを見ていても、決して順調な天候ではありあせんでしたが、自社栽培を始めて12年目にして最高の五百万石を手にすることになりました。

 台風16号の影響が心配されますが、この台風が通過した後に越淡麗の稲刈りが始まります。こちらは晩生品種ですので、早生の五百万石とはまた違った品種特性を持っていますが、さてどうなることでしょうか。無事の収穫を祈るばかりです。

 まずは五百万石の豊穣を天神地神に感謝し、そしてスタッフの精励に感謝します。
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2014年産米の稲刈り開始 [根知だより2014]

9月10日(水)午前
 昨日9日から五百万石の稲刈りが始まりました。まずは無農薬栽培米から。今年の天候は8月中旬から雨の日が例年より多く、田んぼがなかなか乾かない中で心配していましたが、ようやく稲刈りができるコンディションになりました。
 スタッフの準備は万端で、ここまで待たされた分、とても精力的に作業を進めています。許された日数は減るばかりですが、五百万石の登熟状態はとても良く揃っています。あとは短期勝負で1秒の無駄もなく、精密なスケジュールで確実に収穫作業を進めるだけです。
 五百万石の収穫を1週間余りで終えてから、体勢を立て直して、後半戦の越淡麗へと9月末まで天気をにらみながら時間との闘いが始まりました。
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