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「万年筆」で頭の体操 [農村だより]

 11月22日月曜日午前

 昨日、家での話題から。

 一千万円を超えるお値段の万年筆というのががあるんですね。

 蒔絵を施したもので、マニア垂涎の的とのこと。

 作者は、遠く欧州まで納品に出かけて、お留守なんだそうです。

 伝統工芸の世界では、従来の製品を購入し使用してくれる需要層が

 随分減っているので、その技能を残していくには、新たな素材や製品

 に蒔絵を施して、需要を創り出していくしかない、ということのようです。

 非常にニッチな需要かもしれませんが、大切な技能・技法を継承してい

 くためには、こうした発想の転換と取り組みが欠かせません。

 米作り農業も、日本酒造りの醸造業も、従来のままの体制で生き残れる

 とは思えません。やはり、時代とともに変化していくことが必要です。

 大きな地域社会や経済取引の枠組みの中で、自分だけが変わることは

 容易にできませんが、しかし、変わることができなければ生き残ることも
 
 できません。どうしましょう。

 「Voice」という月刊誌の12月号の寄稿の中に、いい表現がありました。

 小林弘人という人の「β版カルチャー」という言葉です。

 メディアの世界を展望した論説ですが、すべての要素が猛烈なスピード

 で変化していく世の中では、農業も酒造業も同じく変わっていかざるを得

 ません。事業構想というのは、「完成品カルチャー」の発想ではいつまで

 経っても動き出しませんから、とりあえずできそうな部分から始めて、徐々

 に熟成する、完成度を高めていく、という進め方が適切な手法でしょう。

 私も2003年に米作りを自社栽培で始めた時、たった1枚の田んぼでし

 たし、農機具は何もない状態でした。それから8年が過ぎて、まがりなり

 にも大規模専業農家なみに装備・組織・技能が整いつつあります。

 酒造りとの連携も、やりながらつくり上げてきたもので、その間に我々自身

 はじめはわからなかった「価値」を少しずつ、しかし確実に深く理解するよ

 うになりました。

 現代の状況を把握する感覚は、まさに「動体視力」なみのスピード感と、

 背景を幅広く理解する基礎知識が要求されます。難しいですね。

 でも、生き残りたければ、どうしてもやらなければならないことがあります。


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