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時は流れる [農村だより]

 11月17日水曜日午前

 四十を過ぎた頃からでしょうか、歴史というか、時代の流れというものを感じられる

 ようになりました。私が観ているのは日本酒業界ですが、その興隆と衰退の様を

 業界としても、個々の酒造会社としても、まざまざと見せ付けられています。

 私自身もその中の当事者として日々業務に当たっているわけですが、何と言うか

 世の中が変化していくのに対応できないのは、ある種、歴史の必然というか、ど

 んな業界においても、会社においても、昔から繰り返されてきたことですから、それ

 ほど珍しいことでもないし、日本酒業界だけが特殊なわけでもないんだなあと思い

 ます。

 まあ、よく続いても30年くらいでしょうか。全盛期というのは長く続かないものです。

 日本酒の出荷量が上り詰めたのは昭和40年代です。それからは下降の一途。

 最近では最盛期の3分の1まで出荷量が落ちたそうです。

 個々の酒蔵で見れば、また様々な栄枯盛衰の物語りとなりますが、銘醸蔵として

 一世を風靡した酒蔵も、今は昔で忘れ去られた存在になっているものもたくさんあ

 ります。

 第二次大戦に負けてから65年ですが、その間の業界の変化を俯瞰しただけでも

 隔世の感があります。「いい時もあった」ということでしょう。

 しかし、惜しいのは「時代の流れ」を感じるセンスが鈍いこと、変化への対応が遅

 いこと、成功体験を捨てる勇気がないこと。

 私の経験の範囲においても、灘伏見の大手のどうしようもないバカげた低価格戦

 略と、低品質酒の大量生産。それと相前後して地方発の高級酒・吟醸酒の成功

 と慢心による衰退。

 クロネコヤマトの宅急便に代表される物流革命と、インターネットの普及による情

 報革命が起こって、商流も激変しました。

 世界も大きく変わり、国境を越えた企業活動が当たり前となって、グローバリゼー

 ションの波が日本にも押し寄せています。

 消費者の生活様式が劇的に変わり、価値観が劇的に変わっていく中で、昔から

 のやり方や、たかだか20年30年くらいの成功体験で企業運営ができるわけも

 ありません。日本酒の酒蔵が衰退して行くのは、ある意味において「歴史の必然」

 です。それほど「時代の流れ」に対応・適応していないのです。

 日本酒のもつ「本質的な価値」は、いささかも揺らぎませんし減っていません。

 しかし、その価値を消費者に届ける生産者の組織・思想・哲学が硬直化しています。
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