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農業改革の「ツボ」 [農村だより]

 12月29日水曜日午前

  昨晩ラジオを聴いていたら、「長谷川一夫」について演劇評論家が話していました。ほんの

 ちょっと聴いただけですが、印象に残ったのが「ツボを押さえる」という言葉です。歌舞伎から

 映画へ、そして演出へと転進しながら掴んだ「ツボ」というのがすごいんですね。いまの時代

 になると、あまりに仕組まれてしまい、こなれたやり方がいやらしかったりしますが、誰もわか

 らなかった時代に、大衆を惹きつける「ツボ」をつかんだセンスはとても優れていたのでしょう。

  2010年も終わりますが、我々の米作り農業の現場は、衰亡の道をひた走っている感じが

 続いています。農家も、農協も、行政も、みんな怠けているわけではないのに、日本の農業、

 とりわけ米作り農業の崩壊は目前に迫っています。

  やはり、「ツボを押さえ」ていないので、どんなに努力をしても報われることはないのだとい

 うことです。では、その「ツボ」とは何なのか。

  それは間違いなく「大規模化」と「組織化」です。自民党政権の末期には、その方向性を打

 ち出していましたが、信念のない政権が続いたために、成果を上げることが出来ませんでした。

  民主党政権になる前に、「戸別所得補償」なるバラマキ政策が出て、そのまま民主党政権

 になってやってしまいました。折角の「大規模化」「組織化」の方向性がつぶされました。

  個々の農家にとっては、正しい選択だったかもしれませんが、それは悲しいほどに短期的な

 願望に過ぎません。時代的・社会経済的状況から考えれば、高齢で跡継ぎのいない農家に

 この国の食糧生産を継続的・安定的に依存することは不可能だと、誰でもわかることでしょう。

  政治家は選挙で勝たなければ仕事ができない。しかし、「選挙に勝つため」に農業を犠牲に

 してはいけない。そこのところが民主党、とりわけ小沢一郎はわかっていない。まあ、自民党

 もまったくわかる政治家がいないので、こんな日本の農業になったのですが。

  農家には農地があり、耕作意欲がありますので、農地を集約して、耕作者を少数に絞るの

 は大変難しいことですが、「集落営農」でまずゆるやかにまとめ、その先に「農業法人」を設立

 して、「大規模化」と「組織化」を実現するのが、農業改革の「ツボ」だったんです。

  「だったんです」というのは、もうすでにその時機を逃してしまったので、これからやろうという

 のは無理だからです。農家の平均年齢が70歳を過ぎてしまっては、残された時間が短か過ぎ

 て、まとめる意欲も、後継者を育てる意欲もなくなってしまいました。

  ここから先は、非常に困難な取り組みになりますが、少数精鋭の組織が中央突破して、その

 組織を大きく育てるしか道はありません。生産においては、高品質・安定生産を実現しなければ

 なりませんし、そのために人材の育成を切れ目なく行ない、設備投資もバランスよく進めなけれ

 ばなりません。

  それには、農協のような「協同組合」方式では、とても経営判断ができませんので、経営責任

 が明確な「法人」組織が必要です。要は経営判断の「スピード」が重要なのです。農協では無理

 です。

   それから、「大規模化」については、「大規模農家」では無理があります。組織として農作業・

 農業経営を担わないと、休みも取れませんし、技能の継承も、親子では年が離れすぎてしまい、

 いっしょに作業をしながら訓練する年数が十分に取れません。

  他の産業分野に引けをとらない生活水準を保証するためにも、「個人経営」より「法人組織」が

 絶対的な条件になります。

  あらゆる要素を統合的に考えても、「ツボ」を押さえなければ、絶対に成果は上がりません。

 日本の農業を産業分野として成立させるためには、「大規模化」と「組織化」を実現する政策が

 必要です。とりわけ米作り農業においては。

  
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